ダブリンの鐘つきカビ人間 物語編

 

お久しぶりです。

先日、札幌にて2020年に公演予定だったがコロナで中止となり、満を持して公演された「ダブリンの鐘つきカビ人間」を観劇してきました。

長いので、物語と感想を分けて綴ろうかと思います。もはや自分の記憶のための文章。

ほぼネタバレ。見た人は分かるけど、見てない人にも伝われば幸いですが、いかんせん覚えてるところは細かくなりそうだし、覚えてないところももちろんあるのでめちゃくちゃになる可能性大。ご注意を。過去1の長文。

 

 

旅人の真奈美(最上怜香さん)と聡(櫻井保一さん)は深い霧の森に佇む1軒の屋敷にいる。そこには老人(能登英輔さん)がひとりで住んでいる。ふたりはその老人から昔、この場所にあった市の話を聞くことになる。

 

市民の9割が奇病にかかっている。3キロ先まで見えてしまう者(大原尚峻さん)、指先に小鳥がとまる者(Romanさん)、背中から羽が生えている者(丸山琴瀬さん)、果てはこの国の王(後藤ひろひとさん)までも「偉そうになれない」奇病を患っている。そんな王が、市民に対し「奇跡を起こせるという剣を取ってきてほしい」と言う。

ちなみに、この奇病が蔓延しているために、市を封鎖し、市の周りには厳重に警備する者や怪獣が解き放たれているという。

この物語に旅人として紛れ込んだ真奈美は率先して奇跡の剣探しに立候補する。そこに若かりし頃の老人こと市長がやって来る。市長は旅人に対し、やれ滞在税を払ってない、水道税を払ってないなど言うが、それは王家が支払うということで旅人たちは剣探しの旅に出る。そんな旅人たちのことで市民がザワザワする中からカビ人間(小林エレキさん)が現れる。

突如として現れたカビ人間から距離を取る市民たち。名前の通り、身体中がカビの人間なのである。カビ人間は、正午の鐘をつく為にやって来たに過ぎない。カビ人間は、発病前までは誰もが見惚れる美少年であったが、中身はかなりの悪人であった。男女問わず騙して金を盗り、子どもからまで飴玉を奪う。そんな人間だったが、この奇病により、醜い心は外側に、美しい見た目は内側にと変わってしまった。今では誰もが彼に近寄らない。

そんなある日、カビ人間の職場である鐘つき堂にひとりの娘がやって来る。四つ葉のクローバーを探している様子。カビ人間はその娘に声をかける。カビ人間に驚くその娘の名はおさえ(小島梨紗子2号さん)。逃げるように去って行ってしまったおさえ。ひとり残されたカビ人間の元におさえの婚約者である戦士(A・井上嵩之さん、B・石川哲也さん)が来る。「おさえちゃんになにも手を触れたりしていないか」と。「触るなんてとんでもない」とカビ人間も答える。そのままおさえを追っていく戦士。

場所は変わり、おさえの自宅。おさえの父親であるジジイ(A・氏次啓さん、B・伊達昌俊さん)とそこに来る戦士。先ほどのカビ人間とのやりとりを話す。そこに自室にいたおさえもやって来る。実はこのおさえも「思っていることと反対のことしか喋れない」奇病にかかっている。このとき、神父(キタラタカシさん)がやって来て、戦士に旅人たちが探している奇跡の剣「ポーグマホーン」を旅人たちに渡してはいけないと吹聴する。奴らは邪教団で、その剣で支配しようとしていると。その気になり剣を探しに行く戦士。(例のウマに乗って)これは実は市長の策略で、悪友である神父に頼み、旅人たちに奇跡の剣が渡らないように言ってくれないかと頼んでいた。

一方、剣探し中の真奈美と聡。ここで仮面の戦士と戦うことになるが、あっさりと勝利する真奈美。そのまま森を突き進んで行く。

教会でのミサ、神父によるミサが行われている。ミサ終了後、教会に入ってくるカビ人間。ミサに参加していた市民はカビ人間に驚き、急いで出ていく。その時に教会の外から鍵をかけてカビ人間を閉じ込めてしまう。そこに、教会の奥にいたらしいおさえが来る。「閉じ込められちゃったみたい」と話すカビ人間におさえは「来て!」と。おさえの病気を知らないカビ人間はとても驚く。好き好んで自分に近付く者などいないのだ。戸惑うカビ人間になおも「こっちに来て!」と言うおさえ。戸惑いながらも言葉の通り受け取るカビ人間は恐る恐るおさえに近付く。今度は「私に触って!」と言うおさえに更に動揺するカビ人間。「触って」と言うおさえに控え目に、優しくそっとおさえの頬に触れるカビ人間。すぐに離れるおさえ。「みんなぼくのことを避けるのに、どうして?」と問うカビ人間におさえは「あなたがカッコいいから!バラのように美しいから!」と叫ぶ。その言葉もそのまま受け取ったカビ人間は目を大きく丸める。その後、外から神父が鍵を開けて教会に入って来て、そのまま出て行こうとするおさえに「また、会える?」と聞くカビ人間。首を振りながら「ええ」と言い出て行くおさえ。カビ人間も放心状態のまま出て行く。

その頃の戦士。森を警備する1人である賢者(佐藤杜花さん)と知恵比べで対決する。無事になんとか勝利し、戦士はその道を通り、賢者は去る。そのすぐあとを真奈美と聡も通るが、通ったあとに「今誰か通った!?」と賢者が再登場するも時すでに遅し。

場所は変わり、おさえの自宅に王の使いで侍従長(遠藤洋平さん)が訪ねてくる。ジジイが応対し、王から奇病を患う市民に少しばかりの心遣いを、と伝えそれをジジイに渡す侍従長。ジジイは36歳なのにとても老けている奇病。それに発病前に目が見えなくなっていた。侍従長はそれを哀れみ、自分からも、とわずかなお金をジジイへ渡し去って行く。そこに入れ替わるようにカビ人間が訪ねてくる。手に小さな黄色い花を持って。「おさえちゃんいる?」とジジイに問うカビ人間に、「会えないよ、帰りなさい」と諭すジジイ。それでも「会いたいなぁ」と言うカビ人間。その様子が聞こえていたのか自室の窓からおさえが「来て!」と。カビ人間はそのままおさえの部屋がある2階へ上がろうとするがジジイに止められる。なおもおさえは「来て、早く来て」と言っているが、思っていることが言えずについには泣いてしまう。その様子を見たカビ人間は「どうして、泣いているの…?」と戸惑うばかり。ジジイから再度、帰るよう促され、カビ人間は手に持っていた花をジジイへ手渡し、おさえに渡すよう伝えて去る。おさえは以前にもカビ人間から貰った花をジジイが鉢植えに植え替えた植木鉢を持っていたが、自分の奇病に苦しみ、欲しくもなかったその植木鉢を窓の外から放り投げる。

これがふたりの運命を変えることになる。

その植木鉢が侍従長の頭に直撃したらしく、侍従長は頭がイカレてしまった。市では犯人捜しが始まる。焦るおさえをよそに、噂好きの天使の市民らが犯人の名を言おうとしたタイミングでカビ人間がやって来て

「ぼくがやりました!」

と叫ぶ。驚く市民たち。取り囲まれるカビ人間。カビ人間はそのまま連れて行かれることになる。

ここで1度現代パートへと戻る。すっかり話にのめり込んでいた真奈美と聡。このとき(か序盤か忘れたけど)聡が手にしていた剣は老人の物なので返すことに。(気になって勝手に持ち出していた悟)そして話はまだまだ続く。市長であった老人によると、カビ人間は、たいそう殴られはしたが、死刑にはならなかった。そして釈放されたカビ人間は笑っていたという。

釈放されたカビ人間が鐘つき堂へ来るとそこへジジイがやって来る。「傷はどうだ」と。そのとき、カビ人間は牢屋で隣の人が話していたおさえの病気のことを初めて知ったという。ジジイは気を使ってカビ人間にそのことを伝えていなかったのだ。しかしカビ人間は「これですっきりした」と。「だってぼくのことを『カッコいい』『バラのように美しい』なんて言う人はいないから」と。それでもカビ人間はニコニコしている。そして「あなたはぼくを嫌わないね?どうして?」と問うカビ人間。「嫌う理由がない」とジジイは答える。目が見えないのでカビ人間がどういう見た目かを知らないジジイは見えなくなった分だけ違うものが見えるようになったと言う。話をしているうちに、カビ人間はふと「ぼくは、あなたが目が見えていたときを知っているかもしれない」と。「悪い奴に騙されて、薬を飲んじまった。運がなかったのさ」とジジイは言う。「それは……ぼく?」「…もっと醜い奴だよ」そのまま去って行くジジイ。

ところ変わって市長と神父。なんと、市長は「来たるセントスティーブンスデイに正午少し前につく鐘を聞くと死ぬ」という奇病にかかっていたことが判明。さてどうするのか…。

カビ人間の元におさえがやって来る。自分のために身代わりになったカビ人間を心配する。病気のことも知ったカビ人間はおさえの言葉を反対に訳し、ワケを話す。何故おさえのことを庇ったのか。「きみの病気を知らなかったから」「カッコいい、バラのように美しいって言われて、すっごく嬉しかった。あ、今でも嬉しいままだよ」とニコニコしながら話すカビ人間の頬の傷に気付いたおさえは「いい面構えよ。ぶん殴ってやるんだから。覚悟しなさい」と言い、すぐには変換出来ないカビ人間は混乱しながらもされるがままに、おさえはカビ人間の頬にそっと触れる。最後におさえから花を受け取るカビ人間。ルンルンニコニコのままカビ人間は鐘つき堂の上にのぼり、おさえから貰った花をいつもかぶっている帽子に飾る。

そこへ、市長と神父がやって来る。カビ人間にセントスティーブンスデイに鐘をつかないよう頼むために。ただ、プライドの高い市長は自分が病気であることは言いたくない、だが鐘をついてもらっては困る。なのでカビ人間に折衷案として正午ちょうどに鳴らさないかと提案するもカビ人間は却下。みんなお昼の準備をしなくちゃいけないからお昼ちょうどについてたらダメだという。鐘つきという仕事に責任感のあるカビ人間はそう言って去ってしまう。

さて、森を行く真奈美と変な生き物の扮装になってしまった聡(ザリガニのハサミに恐竜の尻尾に頭からなんか生えてる)、ついに戦士と対面。真奈美と勝負をするが共に斬ることはしなかった。戦士曰く、剣を交えればその者がどういう者か分かるという。そして真奈美たちは邪教団ではないと気付く。気付いた戦士は騙した神父に怒りを覚える。そして3人は協力してポーグマホーンを探すことになる。

来たるセントスティーブンスデイ、神父は教会に火を放つ。市長からの命で教会に火を放ち、その罪をカビ人間にかぶせて鐘をつかせないようにするためである。その為に、市長は噂好きの天使にこういう風に噂を流すように指示する。教会からすぐ離れる市長と神父。その場ですぐに噂を流す天使。噂は火の回るスピードのごとく市民に知れ渡る。その場におさえもやって来るが、カビ人間の仕業ではないと言いたいのに、出てくる言葉は「火をつけたのはカビ人間だ!」市民から「あんたはカビ人間に付きまとわれていただろ、どうしたい。殺すか?」と聞かれ、おさえは首を振りながら「殺して!」と。事態は悪化していく。鐘つき堂に武器を持った市民があふれかえる中。

再び森。謎の番組が始まる。真奈美と戦士と、カッコいいものをイメージしたらエルヴィスになってしまった聡。そこで森の司会者(寺元彩乃さん)が現れる。なんでも、見えない怪獣を倒すのが1stステージ。これをクリアし2ndステージもクリアしないとポーグマホーンが手に入らないという。見えない敵に苦戦する真奈美と戦士だが、エルヴィス聡が「ラブミーテンダー」を歌ってなんとか退治。2ndステージも聡の活躍でクリア。無事にポーグマホーンを手に入れる。戦士がポーグマホーンを持って真っ先におさえちゃんに伝えに行く、と走り去る。

ここで場面転換シーンが思いっきり挟まる。斬新だ……。

カビ人間の笑い声、おさえに連れられ、とある場所にやって来る。教会が燃えたらしいからちょっと見に行ってみようよと言うカビ人間に、必死に訴えかけるおさえ。そこで自分が犯人だと疑われ、みんなが自分を殺そうとしていると知る。しかし、自分はやっていないのだし、裁かれることはないと言い切る。そして神様はどんなときも自分を見守ってくださってるのだから大丈夫だと。それに、鐘をつかないと自分はこの市にいる意味がない。だから自分は鐘をつきに行くよ、と。去ろうとするカビ人間はおさえに言う。

「ぼくは、とっても、おさえちゃんが好きだなぁ」

そう言いカビ人間は鐘つき堂へ。おさえは天を仰ぐ。

そこへポーグマホーンを持った戦士が。そして神父もやって来る。おさえを後ろに避難させ、神父の手下兵士と戦う戦士。ちなみにこのポーグマホーンは1000人斬ると奇跡が起こるのである。戦士は神父の手下兵士を斬り残り2人。神父も倒そうとするが、神父の手には拳銃。2発撃たれてしまうも、弾のスピードを見定め剣で跳ね除け、最終的には神父を刺し、999人。そしておさえにかけよると、おさえはそのポーグマホーンを戦士から奪い取り、走り去る。追いかける戦士。

場所は変わり、鐘つき堂。市長が市民を煽り、カビ人間が来たら処刑するよう演説していた。そこに真奈美と聡(普通の格好に戻ってる)が来る。カビ人間の仕業ではないということを市民たちに訴えるも誰も聞かない。聞かないではなく、2人の姿は市民には見えていない。2人はあくまで物語を聞いているに過ぎないからである。そこに、ジジイが来る。ジジイは市民たちに本当に見たのか?と聞いて回るが誰も聞く耳を持たない。そのままジジイは市民によってその場から連れ出されてしまう。

ここで、物語上の市長が現在の老人の顔(表情)に変わり、真奈美と聡に「お聞かせ出来るのはここまでです」と言うが、こんなところでやめられてたまらない2人は最後まで聞かせてほしいと言う。そして話は続き、武器を持つ市民が集まる鐘つき堂に、その人、カビ人間はやって来る。

おさえから事情は聞いているものの、日々の仕事である鐘をつく為に階段を上るカビ人間。そこへおさえが来る。殺さないでという意味で「殺して!」と叫び、頭のイカれた侍従長が返事をし、銃を1発カビ人間に当てる。もう1度「殺して!」と叫び、侍従長が撃つ。頂上で倒れるカビ人間。少しして立ち上がり、おさえに声をかけられると「おさえちゃんだぁ…」と嬉しそうに呟く。

ここでおさえはありったけの愛を叫ぶ。「地獄に落ちろ、カビ人間!」「お前はみんなからとても愛されている!」「でも私だけはお前を憎む!」「私はお前が大嫌いだ!」最後に、手に持っていたポーグマホーンを天にかざし「奇跡なんてクソくらえ!ポーグマホーン!」と言って、自分を刺すおさえ。それと同時に侍従長にもう1度撃たれてその場に倒れるカビ人間。帽子がパサリと下に落ちる。その途端、市民を脅かしていた病気はなくなり(天使は羽が落ち、3キロ先が見えていた者は普通に見えるように)、倒れたおさえの元には戦士、そして年相応の若さに戻ったジジイの父親。カビ人間は鐘つき堂の上でひとり倒れたまま。物語はここで終わる。

現代パートへ戻り、ポーグマホーンを手に持つ老人。横には抱き合うようにして座る真奈美と聡。老人は、今もセントスティーブンスデイに鐘が聞こえるがいっこうに死ねる気配がないという。この深い霧の中、もう鐘はないのに。そして老人が剣を2度構えると抱き合っていた2人の旅人が倒れる。

暗転。

 

 

ここまでよく読まれたあなたはすごいです。

感想はまた次の更新で書くことにします。