沼部、陸へ上がる 感想

 

お久しぶりです。

11月の札幌公演から始まったぷらすのとえれきの公演「沼部、陸へ上がる」の感想を綴りたいと思います。私は大阪公演で3回観劇しましたので、そのときの記憶を引っ張り出しながら綴ります。いつものごとく長文かつネタバレ満載です。

 

 

 

 

 

話は、42歳になった海内(エレキさん)と小沢(能登さん)が、海内が奥さんと経営する塾の倉庫で再会するというもの。小沢は大麻使用で執行猶予となり外に出てきたばかり。そこで軽く昔の話になりながら飲んでいると、12年前に発足した「沼部」のことを取材したいという青柳(アオヤナギ/野村さん)がやって来て、12年前のことを伺いたいという。12年前に発足した「沼部」と、今は亡きそのリーダー赤星(野村さん)のことを振り返ることになる。

 

まず、誰が12年前のことを事細かく正確に覚えてるだろうか。そこから疑ってかからないといけないんだけど、それは話が進んでみないと気付かない。そして、それに気付いたとき、この話のなにが本当に起こったことなのかが全く分からなくなる。

 

まず3人の演技力に改めて脱帽。

野村さんに関しては瞬時に別人になるので初見のときは急に場面が変わったことが分かるし、複数回見ると変わる瞬間の野村さんを見れるので改めてすごさを実感した。髪が長いので、それをかきあげる姿がドセクシーです。赤星と青柳のときで身長が変わるのも一種のイリュージョン。(青柳がかなりの猫背)

エレキさんも瞬時に時を越える。急に若返ったり老けたりする。瞬時に老ける人見たことない。12年前の海内の純粋さが本当に残酷。浮かれる海内のかわいさは天井突き抜けてる。かわいい。

能登さんも役的に明るいままではあるけど、現在パートになるとただ明るいだけではなく、ほの暗さみたいなものを感じる。この12年生きてきた重みみたいなものを背負ってる感じが。過去パートになるとそれが急になくなる。今回もまた派手な変わった格好してるけど着こなしてるもんなぁ。

 

面白かったなぁというところをまとめる。

1番最初の沼で生物を探してるとき、最前列の上手に座ってたんだけど、エレキさんに網で足掬われるかと思った。ww「足元を掬われる」ってこういうことかと。www網が足先に触れそうになるレベルの近さでした。

アオハライモリ捕獲時の再現VTRを撮影したときの「ド素人の演技」のバリエーションが3人それぞれ違った棒読み具合で天才だった。あれでも感情入れて言ってるつもりなんだよなぁ。分かる。「素人が演技しようと一生懸命気持ち入れてセリフ言ってるつもりなんだけどめちゃくちゃ棒読みになってる」のが出来てしまう演技力を持つ3人のすごさ。

小沢ビジョンの海内のかわいさが異常。(褒めてる)「わちゃわちゃ」「キャッキャウフフ」っていう効果音がぴったりだった。

カレーぶちまけ事件の全て。実況してる小沢の「それー!それー!」に合わせてカレーを方々に、そして自分の身体にぶちまける海内、それを見ながら「なにを…」と戸惑うしか出来ない実況席にいる青柳の図。大阪初日より、大阪最終日の方がエレキさんのゴリラ度が上がってた気がする。天才の集まりか。

 

過去の沼部のメンバーと同い年の今見れたことはすごくタイミングが良かったのか、そうではないのか。舞台の最後の方に「なんでも俺のせいにするな」っていう赤星のセリフに心が痛んだ。人のせいにしまくって生きてるので、改めないとなぁと思った。30歳から42歳の間に沼部それぞれ色んな日々があったわけだが(赤星は亡くなったけど)、小沢のように、赤星みたいになろうとしてお調子者のまま生きるのか、海内のように赤星とラムちゃんを見返してやろうという気持ちも兼ねて家庭を築いて堅実に生きるのか、人それぞれどうやって日々を過ごして年月が経ってどんな人物になるのか。数年前から人生なにが起こるか分からんなぁと漠然と思ってはいたけど、今回この舞台を見たことで、日々の出来事やその人の考え方で人生どうなるのか予想出来ないものなんだなぁと改めて感じた。

例えば今の私に沼部みたいなことが起こったとしても、これから時が経たないと解決しない、今これから苦しむ日々が始まるのかと想像すると苦しくしんどくなるなぁと思って辛くなったりもした。時間しか解決しないことがあるのは充分知っているけど「今この時」が苦しいのにそれが時間でしか解決しないんだものな。

色々と頭をぐるぐる回転させながら考えることが出来る舞台というのは難しくもあるけど、自分の思考の再発見にもなり、見た人の感想を聞いたりして「そんな考えもあるのか」なんて新たな気付きも得たりするので、楽しいんだよなぁ。

あと、この舞台に関しては、能登さん、エレキさん、そして野村さんでなければなしえなかったんではないかと本気で思っています。演じる側は相当難しかったんじゃないかなと。

本当に本当に良い舞台を見れて良かったです。日が経ってもまだまだ考える余地のあるこんな作品なかなかないかと。素敵な舞台をありがとうございました!!!

 

 

ここから話の展開をダラダラと書いていきます。セリフはほぼニュアンスですし、まぁまぁ省略もしてます。そしてまとまらない。見た人はなんとなく分かる、見てない人には伝わりづらい可能性大です。悪しからず。そして、お食事中の方はお食事後に読んでください。

12年前、高校の同級生3人が同窓会で意気投合して、昔よく行ってた沼に赴き、水生生物を探すというもの。そのときにたまたま見つけたお腹が青いアカハライモリ、通称アオハラを赤星が掬い上げ、その網にいたアオハラを小沢が見つけたことから全てが始まる。アオハラを見つけたことが、まずは地方の新聞やフリーペーパーに載り、次に地方のテレビ局が取り上げ、じわじわと沼部の名前が世に知られていき、最後は全国区のテレビに出演するまでに!すると、ファンレターもいくつか届くようになり、赤星や小沢宛にはそれなりにファンレターが届くのだが、海内には1通、それも特に海内のファンということではなさそうである。

「赤星さんはカッコいい、小沢さんはお調子者、海内さんはダメなところがかわいい」といった文面。

この手紙の主である「ラムちゃん」が沼部の運命を狂わせていく。

手紙には連絡先とラムちゃんの写真が入っている。赤星と小沢は海内を焚き付け、手紙をもらったお礼をその連絡先に送れ、と言う。それから3人はラムちゃんと他愛もないやりとりをし、カレーパーティーをすることに。これがカレー事件である。カレーを食べ終え、海内とラムちゃんを二人きりにさせる赤星と小沢。なんやかんやで話は弾むが、海内は急にお腹を下してしまう。トイレに行きたいとは言えず、そんなうちにラムちゃんが先にトイレに行ってしまい、海内は漏らしてしまうことになる。それをごまかすために鍋に残っていたカレーをそこら中にぶちまける海内、果ては自分にもかける始末。そんな様子を見てしまうラムちゃん。後戻りできずに無言で去る海内。

ところ変わって3人だけ。初めてすごく好きになった人に醜態を見られた海内は「終わった………」と絶望しているが、相変わらず赤星と小沢は海内を励ます。むしろ「ここからだ!」などと言う。なんとか持ち直し、赤星と小沢に担がれ、ラムちゃんに「また会いませんか」とメールを送る。その返事は「うふふ」というものだったのだが。

 

暫くし、ラムちゃんから「会いませんか」というメールが海内のスマホへ送られてくる。後日、沼デートをすることに。海内は約束の15分前から待ち合わせの沼入り口にいる。約束の時間になるも、ラムちゃんはまだ来ず。20分過ぎても来ず。心配になってきた海内の元に小沢から電話が来る。小沢「ネットの記事見たか?」海内「見てないよ!それよりラムちゃんが来ない…」小沢「赤星がラブホデートすっぱ抜かれた!」海内「……は?」その相手がまさにラムちゃんだった。ラムちゃんの素性も判明し、なんとラムちゃんの父親はテレビ局のお偉いさんだった。

その後、沼部の3人が集まり話し合いをする。話し合いというより、海内が赤星に一方的に責める図である。「赤星、俺のこと応援するって言ってたよな!俺が今日、ラムちゃんと沼デートするって知ってたよな!知ってるに決まってる、俺言ったもん」赤星はただひたすらに謝るのみ。カレー事件の少しあとぐらいにラムちゃんとお付き合いするようになった赤星。

海内「俺のこと応援するって言ってたのになんで…!」赤星「…好きになっちゃったんだよ」

そして赤星から沼部を解散しようと提案される。沼部も想い人も奪われた海内は憤るとともに諦めの境地になる。小沢も2人の様子を居心地悪そうに見ていた。そのあと、赤星は「反省しに行く」と言い、沼へ行った。なんだか嫌な感じがした海内も赤星のあとを追いかけ沼へと行くと、赤星が沼に沈んでいた。

 

というのが海内の記憶。ここで青柳が「自分は赤星の弟であり、あの明るい兄が自殺するとは思えない。海内が突き落としたのでは?」と衝撃の告白と共に、海内に疑ってかかる。

 

再び沼でやりとりする赤星と海内のシーン。既に沼の中に着の身着のままで入っていた赤星に海内が「なんの装備もなしに入って!危ないぞ」と声をかける。そこから2人のやりとりが始まる。

海内「ラムちゃんから聞いてたんだろ。あいつと一回デートしてやるんだ、とか」赤星「聞いてないよ」海内「俺だけラムちゃんから連絡来てないから、宙ぶらりんの状態なんだよ」赤星「知らないよ」

赤星「『気持ち悪い』って!」海内「きも……え?」赤星「1日に20通メールするのは怖いって」海内「送ったとしてもせいぜい10通くらいだよ!だって返信来ないから!不安で!!」赤星「好きでもない奴からそんなにメール送られたら、怖いだろ…」海内「そんなことないよ!ラムちゃん、俺のこと好きだったと思うもん」赤星「じゃあ『好き』って言われたことあんのかよ?」海内「手紙に…かわいいって…」赤星「『かわいい』は『好き』じゃないから」海内「でも赤星が…」赤星「ああ。俺が言ったよ。かわいいって書いてるな、って。その気にさせたのは俺が悪かった」海内「…そうだよな!俺悪くないよな!?」赤星「ああ、全部俺が悪かった」

そんなやりとりのあとに足を滑らせて沼に沈む赤星。

 

再度現在に戻る。海内は「違う。話なんてしてない。最後に赤星は…笑ったんだよ」小沢「なんで…」海内「分かんないよ!なんで笑ったんだよ!」

 

そしてまた先ほどの赤星と海内のやりとりの場面が再生される。少しセリフが違っていたりする。赤星「生きてて上手くいかないことを全部俺のせいにするのは、もうやめろ」小沢「そりゃそうだ…」海内「…うん」

 

そして現在に戻る。先ほどのように青柳が海内を疑っていた様子は微塵もない。そのときに、海内が「今気付いたけど、2人(赤星とラムちゃん)に対する復讐みたいな感じで、結婚して子どもも出来て、家庭を築いたのかもしれない」と。小沢は思わず「最低だな」と。海内も「だから、ちゃんと向き合います。奥さんと。」と。そして青柳は帰り、飲み直す小沢と海内。

小沢「浮上してみようぜ」海内「陸、目指してみるか」

 

 

 

今回はこれにて。