カメヤ演芸場物語外伝 あいかた 感想

 

お久しぶりです。

今回は、怒涛の北海道遠征観劇旅第1弾で観劇した舞台、イナダ組の「あいかた」の感想を綴っていこうと思います。とても長い。

 

ネタバレしますのでご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

お話の舞台は昭和64年から平成に変わる2日間。

場所はとあるストリップ小屋。そこには売れない漫才師、小屋付き、ストリッパーの4人。昭和から平成に変わるそのとき、4人の思うこととは。

 

あらすじもこんな感じでいいのか怪しいところですが、ざっくりしたあらすじはこういう感じ。平成生まれの私としては、登場人物の発する発言が分からなかったところもあるし、もちろんその当時の雰囲気も知らないので、それを知れたという意味でもこの舞台を見れて良かったなと思います。

舞台を見る前に、登場人物全員がクズかゲスと聞いていたので構えていましたが、私自身は誰も特別にクズともゲスとも思わなかったです。不器用に、一生懸命生きているだけなのに上手くいかない4人がそこにいた。

 

江田由紀浩さんの石崎は本当に不憫で不憫で。ストリップ小屋でストリップショーを目当てに見に来ている人相手に前座で漫才をしないといけないわ、漫才の時間が短縮させられるわ、そのために新しくネタを書き直さないといけないわ、書き直したネタをコンビのマコト(百餅さん)にボロカス言われるわ、そのことで解散危機になるけど小屋付き人のシロウ(小林エレキさん)からは穴を空けるなやれやと言われ、昭和から平成に変わるタイミングでストリッパーのルビー(小山めぐみさん)と一緒に逃げようと誘うも断られ、逃げるために用意してた大金はシロウに渡してルビーと一緒に出ていけと言い、最後はボロカス言ってきたマコトに頭を下げて…。

かなり箇条書きで石崎の身に起こったことを書き留めたけど、思った以上に不憫すぎた。

後半、ルビーに一緒に逃げるように大金を手に説得してるところにマコトの頭をシロウがわしづかみしながら入ってきて、っていうシーン。

そこからの石崎とシロウのやりとりに私は何故かものすごい涙が込み上げてきて堪えるのに苦労した。一瞬涙で視界がぼやけたほど。あとで書くけどエレキさんのシロウは本当にどう考えても感情移入出来ないんだけど、このシーンだけは恐ろしく感情移入してしまったのかもしれない。演者と支配人に挟まれた小屋付きという役職、いわば中間管理職のようなものなのか、その苦労が垣間見えて泣けてきたのかもしれない。私自身中間管理職になったことはないけれども。それが不思議。こればっかりはエレキさんの演技力に心打たれたとしか言いようがない気がする。

さてそのエレキさんのシロウ、もう最初からソファに土足で立った時点で「あ、無理」ってなってしまったのです。断っておきますが、私はエレキさんファンです。まぎれもなく。

どこにどんな地雷があって、どのタイミングでそれが爆発するのか分からず、ステージに出てくるたびにピリピリする人物だった。部屋を出たり入ったりするときだいたい感情が荒ぶってるから思いっきり扉を「バン!」って閉めるので、すごい不愉快だった。家にいるんだよなぁ、扉バンバン閉める奴が…。

ちなみに毎公演、扉をバンバン閉めるので千秋楽が近付くにつれ、扉の建てつけが悪くなっていたそう。開けるのも大変そうだったからね。(私が見たのは最終日の2公演)

自分の思い通りにならないときに男性女性相手に関わらず怒鳴り散らしててもう本当に嫌だった。怖かった。怒鳴って言う通りにさせてやろうって奴本当に嫌だ。マコトには叩く殴る蹴るともう見てられなかった、痛々しくて。それと、ルビーと付き合ってる(この表現で合ってるのかも甚だ怪しいが)けど、ひとつもルビーのことなんか愛してなさそうに見えた。DV、挙句はルビーに身体を売らせようとする。そういう意味ではクズでゲスなのかもしれないけど、そんな簡単に済ませていいような人物じゃない気がする。

話が進むにつれて、私は「もうシロウ出てこないで」と思っていた。エレキさんを見に来たはずなんですけどね?ファンをここまでの気持ちにさせる演技をされてたってことだからすごすぎるんだよな。あともうひとつ、私全然シロウの顔や表情を見ていなかった気がする。正確には意識的に目を逸らしていた。ふいに芝居中に客席の方を向いて万が一目が合ってしまうのが嫌すぎたからかもしれない。シロウのこと嫌いすぎないか、私。それぐらい怖かった。

では次めぐさんのルビー。色気ェ…。今回ではっきり分かったけど、めぐさんもたいがい演技力の塊ですね。めちゃめちゃ妖艶だった。年下のマコトに対しては色気ムンムンのお姉さんで、恋人であるシロウ(だいたい怒ってる)には弱弱しく、今まであまり絡みがなかった石崎に対してはフレンドリーに話すけど適度に遠慮した話し方で、誰と話すかで喋り方も全然違うかった。今もだけど、それ以上にこの時代の女性は生きにくかったんだなと思う。何故ルビーさんがここまで苦労しないといけないのか。DVもするわ身体売らせる仕事を振ってくる恋人のシロウから離れないのも不思議で仕方ない。一種の洗脳なのかしら。本当ルビーさんには幸せになってほしかった。

百餅さんのマコト。まぁ絶妙にチャラい。「そうすか」というような崩した喋り方。最初こそ中の人の「絶対いい人感」をなんとなく勝手に感じ取ってたんだけど、石崎にボロクソ言うところは1ミリもそんなことは感じられなった。ボロクソ言って時間経ってからまた調子のいい感じで喋るところがちょっとクズいな~とは思った。でも別に嫌な感じには思わなかった。ネタに関してボロクソに言ってたけど、そこはその時代の若者、つまり流行に敏感なわけで、石崎のネタが古いと指摘していて漫才に対してすごくプロフェッショナルな人物だなと私は思った。

 

最終的には石崎も多少報われたような終わり方で一安心しましたね。楽しく明るいからほど遠いお話だったけど、本当に見れて良かった。演劇は色んな世界へ連れて行ってくれる。これだから観劇はやめられない。

とんでもなく長くなりましたが、以上です。よくまとめました私。自分で褒める。

 

ということで今回はこれにて!