葉桜とセレナーデ 感想

 

 

恐ろしく日が経ちすぎました。もうひとつの舞台の感想も書きたかったけど、致し方なし。

久しぶりに舞台の感想を綴ります。

 

先日7月15日から18日まで札幌で公演していました、のと☆えれきの「葉桜とセレナーデ」の感想を綴りたいと思います。長文になりますのでご注意を。ネタバレももちろん満載です。

※今回、能登さん、エレキさん、どちらも役名がないので、「能登さん」「エレキさん」と表記することになります。

 

 

このコロナ禍での、とある産婦人科の駐車場が舞台。妊婦以外はこの駐車場で待つシステムとなっている。そこに1人、椅子に座って待っている父親がいる(エレキさん)。そこへ、中で入院している妊婦からの荷物を届けにきたもう1人の父親(能登さん)。能登さんは荷物を病院の受付まで持って行き、すぐに駐車場へ戻ってくる。そこで、他人同士のなんとも言えない会話から2人の「父親」の物語が進んでいく。

ザッとしたあらすじはこんな感じ。

302号室に入院してる妊婦さんというのが、「かこちゃん」というお名前。その旦那さんは「大石」(漢字は不確か)。

簡単に言うと、かこちゃんは中学生の頃に母親に出ていかれ、おじいちゃんの元で育つけどそのおじいちゃんも高校生の頃に亡くなり、喪主まで務めた。その高校生のときにバイト先として雇われたのが能登さん夫婦が経営している居酒屋だった。ちなみに物語の今現在、かこちゃんの旦那の大石というのはコロナのせいもあってフラフラしていたが、いざ妊娠が分かったとなり、仕事に就いたりもしたけど向いておらず、違法の漁をして逃げている状況。

能登さんは、かこちゃんがバイトとしてやって来た高校生の頃から親身にお世話をしていた。言うなれば「父親代わりの人」。かこちゃんも、能登さん夫婦のことを「本当のお父さん、お母さんみたい」と言う程。

対してエレキさんは、かこちゃんの「実の父親」。元妻(かこちゃんの母親)と結婚していたものの、仕事がどうにもならず1度東京に1人戻り、仕送りもしていたが段々おろそかになり、ついには元妻から離婚届が送られてサインしそのまま…。つまり、父親になることが出来なかった人。

 

ここからは能登さん、エレキさんの個人の感想も混ぜていきます。

能登さん。この人は陽気な感じの人なんだけど、いざ子どもを持とうと思ったときには色々頑張ったが出来なかった人。それを「残念だ、仕方ない、じゃなく、これが俺たち家族の形なんだ」と言ったときの説得力たるや。それを父親になれたくせに父親にならなかった人物に訴えるんだもの。辛くて仕方ない。それを聞いている父親になれなかったエレキさんも辛い。が、それが事実。反論の余地はない。

光が強い分、隠された闇がものすごく濃い。でも、後半言いたいこと言って和解みたいになるんだけど(面白いシーンのひとつ)、そのときに言ってたのが「あなた(エレキさん)がいたから、かこちゃんに出会えた」って。そんなこと言える…??人が良すぎる。まぁ序盤のエレキさんの雑な「警察だ(嘘)」も何故か信じてたし(最終的には嘘って分かってたけど)。

また後半別のシーンでは、チェッカーズのメンバーの指摘をする前に(序盤にエレキさんがチェッカーズのメンバーを言ってた)前髪をこよりにしてたときの寄り目が可愛かったですね。あとは謎の腕を鍛えるときの腕の筋がバキバキでしたね。能登さんファンの皆さん大丈夫だったかな?私はなんとか持ちこたえた。「男」じゃないか…(どういう感想)。

 

エレキさん。最初からずっとソワソワしてる。当たり前なのだが。実の父親とバレたくもないけど、妊婦である実の娘の様子も気になる。娘に覚えられてもいないけど、これからはなんとか娘の力になりたいと思って元妻から聞いたこの産婦人科に来た。能登さんが離れ、入院している娘と窓越しにやりとりするシーン。エレキさんの語りだけで、病室にいるかこちゃんの表情まで想像出来た。エレキさんの語り口も「実の父親ではあるけれど、お腹の頃の写真でしか知らない今はすでに成人した女性の娘を見て、父親らしいことをしたいけど、どこか他人行儀な物の言い方になってしまっている」のがさ、すごいよね。あまりにも優しすぎる語りかけが、まさに。接し方が分からない感じが。「哀愁」っていうのがハマりすぎてた気がする。

エレキさんの「パワー」は端々に今回感じられた(前回見た舞台ではエレキさんのパワーが封印されてたので)。このエレキさんが、泣いてもよさそうなシーンで、頬に一筋光るものが見えて、「え、泣いてらっしゃる…」って感動しかけた2秒後に「いや汗か?」って思ってしまったけどどうだったんだろうか。真実はエレキ汁のみぞ知る(帰れ)。

 

あとはやはりこの2人が合わさったときの勢い、間、空気。相撲までの流れも素晴らしい。エレキさんが「なにこれー-!?」って言いながら能登さんに向かってめっちゃ突進していったのは本当に死ぬほど笑った。

出産を待つ父親のソワソワ感を表した動きをシンクロさせるのも息ぴったりでさすが。腕組み、左足を組み、反対に組み変え、左後ろを向き、前を向いてほっぺたをぺちぺち。

全体的には複雑な思いなんだけど、どこか考えさせられるし完全に他人事でもないし誰にでも起こる可能性はあるし、観劇する側の人生経験によっても感想が大きく異なるんではないかという舞台でした。とても良かったです。

笑わせるところでは全力で笑わせ、聞かせるところではこちらの心を切り刻むかのように訴えかけてくる。このすさまじい緩急がのと☆えれきの真骨頂だと思います。

 

寒ささえ感じた真夏の札幌で、どこか哀愁を漂わせながらも心温まる舞台を見られたこと、幸せに思います。本当にお疲れ様でした。素敵な舞台をありがとうございました。

 

今回は、これにて。